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February 12, 2011

単分子膜

1月24日(月)。化学II、脂質について。

この分野では、ずっと、ヨウ素価とかけん化価というものが扱われていて大学入試にも出題されていた。これらは、化学工業の分野で使われていた(今も?)のだろうけれど、科学的に重要なことがらだとは思えないし、無駄な計算問題の題材ともなっていた。このごろやっとこれらが教科書から消えたようなので、安心して、取り上げないで通過することができる。

油脂、リン脂質、ろう、ステロイドと順に説明する。話をふくらませる話題はいくらでもあるが、適度におさえなければならない。
と言って、その「適度」はどれくらいなのか。いつまでたっても、悩み続けるポイントであるが。

だらだらとした話で終わらせずに、理論的なことも少し入れたい。入試直前でもあるし、単分子膜の実験と計算をやってみた。

実験書を参考に、ステアリン酸のエタノール溶液をつくった。これを水面に滴下し、形成される単分子膜の面積を測ることから、アボガドロ定数を求めるという実験である。
ステアリン酸の質量とエタノールの質量から、質量パーセント濃度を出す。エタノールの密度を使い、モル濃度にする。溶液をピペットから20滴滴下し、その質量から、1滴の質量を出す。そして、1滴に含まれるステアリン酸の物質量[mol]を計算しておく。
一方、ステアリン酸の分子構造から、分子一個の断面積を見積もる。断面の直径を4Åとすると断面積は1.6×10-19m2である。副教材の問題集に載っている問題では2.0×10-19m2としてあった。
エタノール溶液を水面に1滴滴下するが、ここで形成される単分子膜の面積を知る必要がある。実験書では滑石の粉末を撒くようになっている。地学室から滑石の標本を持ってきて、やすりで削って粉を水槽の水面に撒いてみたのだが、あまりうまくいかない。そこでドラッグストアへ行って、ベビーパウダーを買ってきた。これは、うまくいった。
ベビーパウダーで白く覆われている水面に、ステアリン酸の溶液を滴下すると、水面が大騒ぎになる。そのうち、ベビーパウダーが押しのけられた領域が、星形からゆがんだ円形にまとまってくる。そこへ、トレーシングペーパーの方眼紙をさっとのせると、その下の模様がうっすらと透けて見える。手早く油性フェルトペンで輪郭を写し取り、マス目の数を数えて、単分子膜の面積とする。
単分子膜の面積と、さきに見積もった分子の断面積より、ここに落とされたステアリン酸分子の数がわかる。この数と、求めておいた物質量から、アボガドロ定数が計算できる、というわけである。

脂質についての講義のあと、日曜日に予備実験しておいた上記の内容を、生徒たちの前でやって見せた。単分子膜の面積を見積もるところは、手を挙げた生徒にぬれた方眼紙を渡して求めさせた。
計算の結果は、広く認められているアボガドロ定数の値の、約8倍となった。

まあ、2倍くらいの誤差に収まれば上出来だと思っていたけれど、8倍というのはいささか格好が悪い。でも、実験結果は結果である。これをどう考察するか。誤差のもととなる要因をいくつかあげてみた。そして、こういうことを検討するのが、君たちがこれから大学で実験をしたあとに出す実験レポートの「考察」なんだよ、などど、禍を転じて福となすような話をして終了とした。

いよいよ、大詰めである。

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