« January 2011 | Main | March 2011 »

February 13, 2011

ウニの幼生を観察する

2年、生物I。

私は生物も話し慣れているが、生徒実験の題材はごく普通のものしかやったことがない。大学の教職単位としてとった夏期集中の「生物学実習」は面白かったし、そこで行った実験は、今までいくつも授業に取り入れてきた。とは言え、夏の集中で他学科の学生を対象に行える範囲の実験実習であったから、季節が限定されるナマのものについて私はあまり知らないのである。
ところで、勤務校の同僚である生物のAさんは、動物の方が専門らしい。熱心に、生きたものを実験に取り入れている。今年度、私は彼のペースに合わせて一緒に2年の生物をやっているので、実験も彼の企画するものを一緒にやることになる。今回は、ウニの発生初期の胚を観察することになった。

材料は、Aさんが採集してくる。ウニは、うっかり取ると漁業権にひっかかるので、そこはちゃんと配慮して、大丈夫なところで許可を得て取ってきているのだという。神奈川県には、自然の海岸がまだけっこうあるのである。教科書のスケジュールだと発生は夏頃にやるのだけれども、バフンウニの産卵期が今頃なので、実験だけここでやることになる。

Uni17クラス分、採集されてきたバフンウニ。この時期のことであり、じゅうぶんに寒い生物準備室で水槽に入れてバブリングしておけば生きている。エサは乾燥ワカメであって、ぱらっとまいて与えると、トゲの間から管足をのばしてきてワカメをとり、口のまわりにいくつもくっつけて食べる。見ていると面白い。

産卵と放精(何だ、昨日入れたATOK2011が変換してくれないなあ)させるには、ハサミなどで口器を切り取ってKCl水溶液を注ぎ込むのが普通のやり方である。でも、そうすると、もちろんウニは産卵(放精)後に死んでしまう。Aさんのやり方は、口器のわきに、KCl水溶液を注射器で注射するというもの。そうすると、口器を切り取る方法よりも産卵(放精)の勢いは良くないけれど、

死なないから、海に返してやれる。それで、来年またぼくに捕まったら、また、働いてね、って。

これはメスが産卵している様子。

生徒実験では、まず、この様子を見せる。黒板の近くで1つだけ産卵させているのをビデオカメラで撮影し、プロジェクターでスクリーンに投影する。
つぎに、この未受精卵を各自に顕微鏡で見せたら、シャーレの上でオスに放精させた精子を含む液を、ツマ楊枝の先に付けて持って行かせて、顕微鏡下で受精の様子を観察させる。受精膜が形成され、また、光を絞ってコントラストを上げればたくさんの精子が卵のまわりで動いているのが見える。

Uni2次に、あらかじめ用意してある、いくつかの発生段階の胚を含む海水を、順に観察させる。今年はうまくいっているとのことで、立派なツノのあるプルテウス幼生までのいろいろな胚を見ることができた。

顕微鏡の接眼レンズに、そのままデジタルカメラのレンズを近づけると、このように撮影することができる。この写真は、SONY の CyberShot F77 で撮っている。光軸をうまくとらえるのが少しむずかしい。
Uni3
本物を見られれば、やはり、面白い。2コマ続きの実習であるが、生徒たちは熱心にスケッチしていた。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 12, 2011

単分子膜

1月24日(月)。化学II、脂質について。

この分野では、ずっと、ヨウ素価とかけん化価というものが扱われていて大学入試にも出題されていた。これらは、化学工業の分野で使われていた(今も?)のだろうけれど、科学的に重要なことがらだとは思えないし、無駄な計算問題の題材ともなっていた。このごろやっとこれらが教科書から消えたようなので、安心して、取り上げないで通過することができる。

油脂、リン脂質、ろう、ステロイドと順に説明する。話をふくらませる話題はいくらでもあるが、適度におさえなければならない。
と言って、その「適度」はどれくらいなのか。いつまでたっても、悩み続けるポイントであるが。

だらだらとした話で終わらせずに、理論的なことも少し入れたい。入試直前でもあるし、単分子膜の実験と計算をやってみた。

実験書を参考に、ステアリン酸のエタノール溶液をつくった。これを水面に滴下し、形成される単分子膜の面積を測ることから、アボガドロ定数を求めるという実験である。
ステアリン酸の質量とエタノールの質量から、質量パーセント濃度を出す。エタノールの密度を使い、モル濃度にする。溶液をピペットから20滴滴下し、その質量から、1滴の質量を出す。そして、1滴に含まれるステアリン酸の物質量[mol]を計算しておく。
一方、ステアリン酸の分子構造から、分子一個の断面積を見積もる。断面の直径を4Åとすると断面積は1.6×10-19m2である。副教材の問題集に載っている問題では2.0×10-19m2としてあった。
エタノール溶液を水面に1滴滴下するが、ここで形成される単分子膜の面積を知る必要がある。実験書では滑石の粉末を撒くようになっている。地学室から滑石の標本を持ってきて、やすりで削って粉を水槽の水面に撒いてみたのだが、あまりうまくいかない。そこでドラッグストアへ行って、ベビーパウダーを買ってきた。これは、うまくいった。
ベビーパウダーで白く覆われている水面に、ステアリン酸の溶液を滴下すると、水面が大騒ぎになる。そのうち、ベビーパウダーが押しのけられた領域が、星形からゆがんだ円形にまとまってくる。そこへ、トレーシングペーパーの方眼紙をさっとのせると、その下の模様がうっすらと透けて見える。手早く油性フェルトペンで輪郭を写し取り、マス目の数を数えて、単分子膜の面積とする。
単分子膜の面積と、さきに見積もった分子の断面積より、ここに落とされたステアリン酸分子の数がわかる。この数と、求めておいた物質量から、アボガドロ定数が計算できる、というわけである。

脂質についての講義のあと、日曜日に予備実験しておいた上記の内容を、生徒たちの前でやって見せた。単分子膜の面積を見積もるところは、手を挙げた生徒にぬれた方眼紙を渡して求めさせた。
計算の結果は、広く認められているアボガドロ定数の値の、約8倍となった。

まあ、2倍くらいの誤差に収まれば上出来だと思っていたけれど、8倍というのはいささか格好が悪い。でも、実験結果は結果である。これをどう考察するか。誤差のもととなる要因をいくつかあげてみた。そして、こういうことを検討するのが、君たちがこれから大学で実験をしたあとに出す実験レポートの「考察」なんだよ、などど、禍を転じて福となすような話をして終了とした。

いよいよ、大詰めである。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« January 2011 | Main | March 2011 »