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December 05, 2010

角田光代 『対岸の彼女』

先日の神奈川総文祭放送部門大会で、勤務校の生徒が朗読で読んだ作品がこれであった。

私はこの角田光代という作家を、この間まで知らなかった。そして当然、『対岸の彼女』も読んだことがなかった。
生徒が、2分間の朗読のためにとりだした部分。主人公と思われる葵がラオスの田舎で金品を盗られた後の場面なのだが、それが作品全体の中でどのような位置づけなのか、生徒に聞いてみてもどうもよくわからなかった。
それで、たまたまブックオフでこの単行本を見つけたので、買ってきて読んでみたのである。直木賞受賞作であることは、本を買ってから知った。

内容は、面白かった。ぐいぐい引き込まれて、久しぶりに夜半過ぎまでの読書となった。設定や展開に無理があると感じるところがあったものの、おおむね、ストーリーも提示されている主題も、まことに魅力あるものだった。
希望としては、ナナコのその後を明らかにしてもらいたかったな、というところ。

ところで、私は2分間の朗読練習にずいぶんつきあったので、その部分のテキストを暗記してしまっている。その上で全編を読んでみて、気がついたことがあった。この作家が、意識的にか無意識にかは知らないけれど、好んで繰り返し使う表現があるのだ。

羽虫が ひそやかに のろのろと 遮二無二 …ればいいものを 馬鹿みたい

取り出したのは600文字ほどだったはず。その中に含まれていた上記の表現が、この作品で複数回数用いられていた。調べてみると、この作家は、『ひそやかな花園』という作品も書いている。
私たちは、言葉の使い方を、よい文章を読みその中に出てくる用例で覚える。角田文学の若い愛好者は、こういう表現を身につけていくのだなあ、と思った。

ところで、上記大会では、参加者が選ぶ朗読のための作品に角田光代のものが非常に多い、ということが言われていた。もっと他の作家のものを発掘して、というのである。でも、参加者の多くを占める女子生徒たちの心に響く、読みやすい文章を書く神奈川県ゆかりの作家というと、現在、この人ということになるのだろう。『対岸の彼女』を読んで、これはしかたないのではないかとも感じた。

うーん、でも、中沢けい の初期の作品なんか、どうなんだろう。今更なのかなあ。
島田雅彦は、私の高校の後輩なのだけれど、ああいうのはまた、朗読の素材にしにくい?
石原慎太郎は、これもまた、おすすめというわけにはいかないしねぇ。

しばらくは、角田光代の天下なのかな。

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