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January 28, 2009

合成樹脂の実験-グリプタル樹脂

3年の年度末特設講座。

時期も時期だし、やるとすれば受験補習のようなものになるかなと思ったのだが、登録してきた生徒に希望を聞いたら実験をしたいとのこと。それならばというので、授業で充分に扱うことができなかった項目を取り上げ、たっぷりと実験をしながら解説するという内容にした。
2時間続きが2回である。前回はコロイド化学をとりあげた。こんどは合成樹脂と合成繊維をつくってみようと思う。そのための予備実験を、さきほど行ってきた。

内容は、おおきく2つ考えている。加熱して重合させる合成樹脂と、界面重合のナイロンである。いずれも私は経験が少ないので、予備実験が自分の勉強になる。

合成樹脂としてとりあげたのは、グリプタル樹脂である。
グリプタルとは何だということになるが、これ、グリセリンとフタル酸が原料なのである。まんまの名前。

Glyptal_resin

写真の左上より。

  1. 電熱器に、ステンレス皿に砂を入れてのせる。砂の温度は200度を越えている。
    そこへ、弁当などに使うアルミ皿の、やや厚手で丈夫なものをのせ、グリセリンを9mL注ぐ。
  2. これが沸騰近くまで温度上昇し白煙が上がってきたら、無水フタル酸16gを乳鉢で擦っておいたものを加える。ここでの温度低下は好ましくない感じで、半量でやった方が良いかもしれない。溶けるまで時間がかかってしまうと、無水フタル酸が気化してどんどん飛んでいく。皿のふちに、綿飴のように昇華したものが付着してくる。
  3. 再び沸騰近くまで温度が上がったら、濃硫酸を1滴加える。これは触媒であり、すぐにエステル化反応が始まってはげしく泡立つ。
  4. 硫酸触媒だと、どうしても少し炭化が起こってこのように褐色になる。見極めが難しいのだが、「反応の発泡」が終わって「できあがった樹脂が沸騰している」ようになったら、砂浴から下ろした。
  5. まだぷつぷつと泡立ちながら、だんだん冷めていく。
  6. 飴色の透明な樹脂になった。触ると、つやつやつるつるである。

要するにポリエステルなのであるが、このような樹脂の場合は、アルキド樹脂とよばれる。アルキドとはアルコールとアシッドの合成語なのだそうで、グリプタルともども、あまりよい命名センスでもないぞと思う。

それはともかく、実験自体は、比較的簡単に納得のいくものができるので、まあ良い感じである。
あと、明日の空き時間にナイロンの予備実験をして、あさっての3年の最終授業にそなえよう。

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January 25, 2009

ゴム状硫黄は黄色?(第3報)

続きである。「ゴム状硫黄」は、本当に黄色なのだろうか。

外国の教科書の記述をさらに見よう。Miessler and Tarr のものを持っていたのだが、前のエントリに記載するのを忘れていた。また、リーのものを新たに入手した。

  1. Inorganic Chemistry 2nd. ed Gary L. Miessler, Donald A.Tarr
    Heating sulfur results in interesting changes in viscosity, At approximately 119゚C sulfur melts to give a yellow liquid, whose viscosity gradually decreases because of greater thermal motion until approximately 155゚C(Figure 8-22). However, further heating causes the viscosity to increase, dramatically so above 159゚C, until the liquid pours very sluggishly. Above about 200゚C the viscosity again decreases, with the liquid eventually acquireing a reddish hue at higher temperatures.34
    The explanation of these changes in viscosity involves the tendency of S-S bonds to break and re-form at high temperatures. Above 159゚C the S8 rings begin to open; the resulting S8 chains can react with other S8 rings to open them and form S16 chains, S24 chains, and so on:
    (図がある。 S8の環 → 鎖状につらなったS → S16 → S24 →… となっている)
    The longer the chains, the greater the viscosity (the more the chains can intewine with each other). Large rings can also form by the linking of ends of chains. Chains exceeding 200,000 sulfur atoms are formed at the temperature of maximum viscosity, near 180゚C. At higher temperatures, thermal breaking of sulfur chains occurs more rapidly than propagation of chains, and the average chain length decreases, accompanied by a decrease in viscosity. At very high temperatures brightly colored species such as S3 increase in abundance and acquire the reddish coloration. When hot, viscous sulfur is poured into cold water, it forms a rubbery solid that can be molded readily. However, this form eventually converts to the yellow, crystalline α form, the most theramodynamically stable allotrope, which consists again of the S8 rings.
    (Figure 8-21 として、α-S8とS6の結晶構造の図がある。また、Figure 8-22 は100゚Cすぎから300゚Cにかけての粘度の変化を示しているグラフである。
    文献34は、The Sulphur Data Book, W. N. Tuller, ed., McGraw-Hill, 1954 だそうである)
  2. リー無機化学 J. D. Lee著、浜口他訳
    プラスチック硫黄すなわち無定形硫黄は液体硫黄を水に注いで得られる。これには環状硫黄分子が含まれている。多数の大きい環状硫黄S10やS12がつくられている。
Leeの本にはゴム状硫黄の色についての記述がない。また、液体の硫黄を高温にして、一度粘度が上がってから再び粘度が下がったものを水に注ぐという記述もなく、さらにその成分はS10やS12であるとされていて、S3についての言及がない。こういうものを「ゴム状硫黄」と称するのなら、それはひょっとしたら、(純度が高ければ)黄色いのかも知れない。
これに対し、Miessler and Tarr の方は、たいへん詳しく書かれている。200゚Cをこえると液体の色が赤みを帯びる、そのようなときには硫黄の鎖長が短くなり明るく着色したS3のような化学種の存在比が増加するので赤っぽい色になるとしてある。「プラスチック硫黄」の色については書かれていないが、黄色く変わっていくと書いてあるから元はそれよりも赤っぽい色をしていると解釈していいだろう。

ということで、硫黄の液体を高温に熱したとき、粘度が低下する原因は硫黄の鎖がずたずたに切れるからであり、そのときに存在する鎖長の短い化学種の色は赤っぽいのだ、ということになった。
これに対し、「鉄分などの不純物があるからそういう色をしているので純粋ならば黄色なのだ」と主張するのは、これはかなり厳しいのではないだろうか。

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January 18, 2009

センター試験

今日は大学入試センター試験の第2日めである。

勤務校の生徒たちの受験会場は、男女とも麻布大学と指定された。昨年度は男子が横浜国大、女子が相模女子大であって、生徒たちの間には、なぜ相模原まで?という反応もあったようだ。でも、横浜国大は地元だとは言いながら坂をのぼっていくのが(歩いてもバスでも)大変である。少々遠くても駅前の大学が会場に指定されて良かったと考えるべきだろう。

さて、今日行われた「化学I」の問題が発表されているので、私も解いてみた。40分ほどで、1ミスの96点であった。電子1個がもつ電気量を求める問題で、かなり考えたあげく、間違えてしまった。この手の、アボガドロ定数Nが出てくる文字式の問題は苦手である。

センター化学は、かなりくせがある。それは、
・暗記量の勝負ではなく、なるべく考えさせて、
・教科書のレベルを超えずに、
・平均点を60点程度にする
という要請からくる、やむを得ないとも言える出題傾向である。

ところで、今年の問題は、「誰でも知っているような基礎的知識を雑多に組み合わせ、すべて正確に知っていないと得点できない」といった、センター化学独特の設問がなかった。いや、第4問の問4や問5、問6はその形をしているけれど、これは関連する知識をまとめて問うているもので、実質的には1つの問である。
また、黒鉛とダイヤモンドだけでなくフラーレンC60も取り上げて化学エネルギーを比較するという、目新しい問題も出題された。

今年の化学Iは、素直でかつ新機軸も取り入れられた、なかなか良い問題だったと感じた。

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January 07, 2009

ゴム状硫黄は黄色?(第2報)

ゴム状硫黄は実は黄色であったとする、例の新聞記事について。承前

日本の高校教科書ではなく、外国の書籍ではどのように記述されているのか、調べてみた。ただし、私の手元にあるものに限られ、しかも多くが邦訳である。

  1. ブラディ一般化学 Bready他著、若山他訳
    融点から沸点まで加熱したときの元素硫黄の挙動は非常に興味深い。最初に融けたときは淡黄色の比較的さらっとした液体となる。さらに加熱を続けると、しだいに暗色化し、糖みつ状になる。さらに高い温度では、色は再び薄くなり、最後には暗赤色の液体となって445℃で沸騰する。これらの変化を図20・9に示した。
    (嘉村注:単体硫黄に関する写真が2ページにわたり7枚掲載されている。白黒だが、液体の硫黄は黒く写っている)
    写真の注:「温度が上昇すると液体硫黄は暗色になり、粘性が増大する。」「沸点では硫黄は暗色であるが、粘性の少ない液体となる。」
    (中略)
    粘性のある液体硫黄を冷水中に注いで急冷すると、硫黄原子はS8環に再配列できなくなることは面白い。このようにして無定形硫黄とよばれる過冷却された液体ができるが、これはゴムに似た弾性をもっている*。そのまま放置しておくと、無定形硫黄中のS8鎖は熱力学的により安定な斜方晶のS8に変わっていく。
    (脚注)* 無定形硫黄の別名にプラスチック硫黄がある。
  2. シュライバー無機化学 原書3版、Shriver他著、玉虫他訳
    斜方晶系硫黄は113℃で融解する。その黄色い液体の温度を160℃以上にすると、硫黄の環が開いて重合するにつれて色が暗くなり、より粘稠になる。その結果生ずるらせん状のSn重合体の融解物を急冷すると、準安定なゴム状物質ができるが、この物質は室温ではゆっくりとα-S8に戻る。
  3. basic inorganic chemistry F. A. Cotton, G. Wilkinson
    On melting, S8 first gives a yellow, transparent, mobile liquid that becomes dark and increasingly viscous above ca.160゚. The maximum viscosity occurs ca. 200゚ but on further heating the mobility increases until the boiling point, 444.6゚, where the liquid is dark red.
    (snip)
    At higher temperatures, highly colored S3 and S4 molecules are present to the extent of 1 to 3% at the boiling point. The nature of the physical changes and of the species involved are by no means fully understood.
  4. コットンウィルキンソン基礎無機化学 Cotton他著、中原訳
    融解すると、S8はまず黄色の透明で流動性の液体となり、約160℃以上で暗色となり、粘性が増大する。このときの粘性が最大となるのは約200℃でるが、更に加熱すると沸点の444.6℃にいたるまで流動性は増大するが、ここでは暗赤色の液体となる。
    (中略)
    高温においては、強く着色したS3およびS4分子が、沸点では1ないし3%の量まで存在する。このような物理的変化と化学種の性質はまだ充分には理解されていない。
  5. コットンウィルキンソン無機化学 原書4版 Cotton他著、中原訳
    融解硫黄を氷水に注ぐとき、いわゆるゴム状硫黄(plastic sulfur)が得られる。通常は、これはS8を含んでいるが、窒素中300℃で5分間Sαを熱し、氷水中に細い流れを放出することによって長い線として得ることもできる。これらの線は水中で引張ってのばすこともできるが、ひとまわり約3.5原子をもつ硫黄原子のらせん鎖を含むものと思われる。その他の硫黄の同素体とは違って鎖状硫黄はCS2に不溶である。これはゆっくりとSαに転換する。
    高温、高圧下でN4S4を分解するとCS2に不溶の灰黒色型の硫黄を生ずる。
ベッカー一般化学、ヒューイ無機化学には、関連する記述がなかった。

以上ながながと引用してきた。
ゴム状硫黄の色についての直接の記述は少ない。しかし、S8によって構成されるSαの結晶以外の、液体であるとかS3であるとかいった化学種の色は、いずれも黄色より濃いとされていることが読み取れる。ゴム状硫黄は複雑な混合物であろうが、これらの色の濃いものとS8とがある割合で混ざっているものであることに疑いはないだろう。
これらの著者たちが、「日本の高校教科書執筆者」たちと同様に、不純物を含む硫黄を用いて実験していたために、揃いも揃って間違っている、そういうことが、あるのだろうか。

今回の教科書訂正申請は、大日本図書である。大日本の高校化学は、化学IBが始まったときに、電気分解に関する記述を変えさせたというクリーンヒットを放ったことがある。つまり、当時の教科書では硫酸など酸性水溶液の電気分解で、陽極で反応を、「水の解離によって生じている水酸化物イオンが陽極に引き寄せられて」反応するものと書いていた。著者の渡辺正さんは、実際に反応するのはそこにたくさんある水分子であって、OH-が反応するというのはウソであると言い、自著のみならず検定基準をも動かして他社のものまで書きかえさせることになったのだった。

でも、柳の下に、もう一匹ドジョウがいるのかというと、うーん。
「不純物が少なく、加熱しても酸化反応などが起こりにくい試薬を用い、ほとんど黄色のS8ばかりの液体の状態で水に入れ、本来のいわゆる「ゴム状硫黄」ではない黄色くてやわらかい無定形物質を得た」
のではないのかなあ?という疑念が晴れない。
今回の、「ゴム状硫黄は実は黄色だった」については、もう少し慎重な検証が必要であろうと、私は考える。

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January 06, 2009

CGIを書くのは時代遅れか

借りているサーバを使ってやってみたいことがあった。

そのためにはCGIスクリプトを書けばよい。
私の持っている参考テキストは、書籍と雑誌特集号が1つずつ。それに、近所のブックオフでもう一冊見つけてきて、3点になった。これらは97年から2000年までの出版であり、いずれも古い。
新しいものはないだろうかと思って、駅ビルの書店を見た。ここはコンピュータ関係の品揃えはなかなか良いのだが、しかし、背表紙に「CGI」と書かれている本は見あたらなかった。

今どき、PerlでCGIを書くなどということは、もう誰もやらないのだろうか。
それはなぜだろう。手書きのHTMLによるページ作成がブログに移行したように、自作CGIなんか書かないで、みんなお仕着せのツール(パーツというべきか)を使うだけになっているということか。

こんなこと言っているようでは、そもそも感度悪すぎなのかも知れないけれど。

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January 05, 2009

ゴム状硫黄は黄色?

asahi.comに、以下の記事がでている。
http://www.asahi.com/science/update/0105/TKY200901050126.html
純度の高い硫黄を用いると、黄色いゴム状硫黄ができるのだという。
そうすると、私のページも書きかえないとならないのだが。

でも、本当だろうか。
そもそもゴム状硫黄とは、硫黄の液体が高温で複雑なポリマーになったりさらにそれがズタズタになったものを、水に入れて急冷したものである。これが黄色であるというのなら、それができる途中の粘度の高い褐色の状態や、さらに黒に近いさらさらの液体も、本来黄色であるということになる。
私には、にわかに信じがたい。

ちょっと、FCHEMで聞いてみようと思う。

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