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May 13, 2007

授業に何を盛り込むか

繰り言のように書いているが。

教科書の中身を終わろうと思うと、授業時間はまったく足りない。
いや、本当に、教科書に書いてある範囲でさらっと触れていけば、終わる。しかしそれでは、聞いている方は面白くないし、身につかないだろうと思う。

化学を例とする。特に文系アタマの人たちには、この科目はわかりにくいようだ。むしろ物理の方が、公式を覚えて解法を身につければ問題は解けるから、わかったような気になることはできるのかもしれない。しかし、化学というのはまるっきりわからない、そういうことを、同僚からも、たまに聞く。

私なりに考えてみると、例えば原子の構造としてボーア模型を示され、はい原子核には陽子と中性子があります、電子はK殻L殻とあります、では原子番号10番の原子の模型を書きなさい、などと言われたときに、「はァ!?」となる、そういうことなのだろうと思う。
それは、理解できないこともない。何だか意味不明なことを天下り式に与えられては、無理もない。

だから、私は、教科書にいきなりあっさりと結論だけ書かれているような、原子核だとか電子のエネルギー準位だとか、そのような概念を人類がどうやって見つけ出してきたのか、歴史的な議論の過程や決定的な実験などを紹介する。薬品や小道具もいろいろ教室に持ち込んで生徒に触らせる。そして、こういう積み重ねの上に、教科書に書いてあるこれが分かってきたんだよ、という説明をしていく。
当然、時間を食う。「シラバス」どおりに進むわけがない。
これは、なにも私の理科だけの事情ではない。勤務校の3年の日本史は、学校設定科目を設け、事実上、大幅な増単でやっている。日本史Bと学校設定科目の両方を取らないと、通史にならない。

ところで、かつての同僚で、こういう人がいた。
彼は、外語で日本史を担当していた。進学校であっても専門学科の枠組みなので、3年の日本史が3単位しかない。ここで彼は、おそらく80時間程度で、ちゃんと通史をやっていたのである。
彼の授業のキモは、どこを削るかにあった。もっとも難しいのは、削ったときに、あとの授業に影響が出ないようにすることなのだそうだ。あれをしゃべらなかったから、次の時代のこれを説明できない、そういうことにならないように、しっかり日本史の形を残しながら、ばさばさと枝を落として、80時間。
この授業は、非常に評判が良かったのだという話を、別ルートから聞いた。

削っても、良い物は良い、面白い物は面白い。そういうことなのかもしれない。
だとすると、私の授業は、まだまだ二流、未熟であるということになる。
付け加えることは、だれにでもできる。削るのは、達人の技。なのだろうか?

先週、化学IIの授業が終わってから、
「数学をやろうと思っていたんだけど、先生の授業を聞いてから、化学に進みたくなりました」
と言ってきた生徒がいた。
思い出してみると、この日の授業で、私は、アセチレンに関連して炭化水素の水素原子の酸性について説明していた。こういう話は、ハマって聞いている生徒には非常に興味深いものであるらしい。もっとも、寝てしまう者も出るのであるが。

何とか工夫してスピードアップを図りながら、それでも、教科書に載っていないことをあれこれ紹介するのはやめるわけにいかないと思っている。

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