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March 31, 2007

教科情報における「モデル化とシミュレーション」

東急田園都市線で、この4月5日にダイヤ改正が行われる。詳しくはこちら。

その目玉は、朝ラッシュピーク時1時間の上り急行をすべて準急とする、というものである。二子玉川から渋谷まで、全列車が各駅に停車することになり、これによりこの区間の所要時間が急行で13分各停で17分であったものが、いずれであっても15分ということになる。

なぜ、このようなことをするのか。
現行ダイヤでは、桜新町で、急行が各停を追い抜く(乗換えはできない)。そこで、少しでも渋谷に早く着きたい乗客は、二子玉川で各停から降り、それを見送って、後から来る急行に乗ろうとする。その方が、渋谷に一本早く到着するからである。
急行は、二子玉川到着の時点ですでに超満員状態である。そこへさらに乗客が乗り込もうとするから、混雑に輪をかけるし、そもそも乗り込むのに時間がかかって列車が遅延する。こういったことのため、田園都市線は、毎朝慢性的に遅れるようになってしまっている。
そこで、この二子玉川での乗り換え客をなくし、混雑を平準化して遅れを抑制する、そのための「準急」導入なのである。

この施策を行うと、急行通過駅の旅客にとっては停車する列車数が2倍になり、所要時間も短くなるのだが、二子玉川以遠の急行利用者にとっては、渋谷までの所要時間が2分余計にかかるようになる。サービス低下であることはまちがいないし、朝の通勤列車が「準急」までしかないという沿線イメージ低下も考えられる。鉄道会社としては、思い切った施策をとったものである。

このダイヤ改正に踏み切るには、慎重なシミュレーションと、それに基づく検討、判断があったことであろう。
もとより、限界に近い輸送量を確保している現行ダイヤをもとにすれば、いじれるファクターは多くない。条件はきびしい。しかし、混雑と遅延の抑制は喫緊の課題である。あえて急行運転をやめてみる、そのとき、乗客はどのように行動するのだろうか…?
試しにやってみて失敗した、では済まされないだろう。乗客の行動、その結果としての混雑率、遅延発生の程度。それらを定量的に分析し、経営的な要素も加味しながらの施策であったにちがいないと思う。

このように、シミュレーションというものは、現実の課題をよりよい形で解決するための方策を見つけ出す手段である。
逆に言うと、シミュレーションを行うには、そこに実在の問題がなくては検討のしようがない。架空のことをあれこれとやってみるのはシミュレーションとしてはそもそも無意味なのである。

教科情報の内容の一つとして、モデル化とシミュレーションが入っている。
私は自然科学的な物の見方をする者であるし、こういう領域の話は、基本的に肌に合う。できれば授業に取り入れてみたいと思う。そういえば、昨年6月に、こういう記事を書いていた。交差点の信号パターン制御で、人やクルマの安全の確保と信号の待ち時間がどうなるか、教材化してみたいというものであった。

ただし、高校の情報科の授業でどのあたりまで扱うことができるかという問題もある。
現職教員等講習会のテキストに、駐車場モデルの例が出ている。これはビルの駐車場に6台のクルマを停めるとき、番号(駐車場所)固定かどうかで不便さがどうなるかをシミュレーションするものである。
私は、講習会でこの実習をやらされた。サイコロを繰り返し振って、どうなるかを見るのである。
これは、苦行であった。つまり、サイコロで出た目のクルマが動く、というモデルなのであるが、現実には、よく使われるクルマと置きっぱなしに近いクルマがあるはずである。入ってきたクルマはすぐに出て行く傾向にあるはずだ。それをランダムに到着、発車するものとしてモデル化するのは、私にしてみれば、非常に重要なファクターを無視した、粗雑なモデルである。こんなモデルで評価しても、現実と合うわけがないではないか…。こんなものしか授業で扱えないのか?

私の考えでは、情報科でモデル化とシミュレーションを取り扱うときには、まず対象がきちんとなくてはならない。そして、そこからいくつかの要素をとりだしてモデル化し、シミュレーションしてみたら、それが現実と合うかどうか、検証しなくてはならない。シミュレーションしてみるところまでで、現実と合うか検証できないようなら、それは学習として無意味である。本当は、検定とか回帰分析とかいった道具も必要になってくるのだけれど、ぱっと見、感覚的にでもいいから、現実と合わせてみるべきだ。その保証の上でこそ、ファクターをいじってみてどのようになるのか、得られる結果に価値があるのだし、学習として意味を持ってくる。

そういうわけで、担当してきた「情報A」と「文書デザイン」において、私はまだ、モデル化のシミュレーションを扱ってみたことがない。いずれやってみたいが、ただやればいいというものではないから、引き出しにネタをためながら、機会を待ちたいと思っている。

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Comments

見切り発車で授業を始めてしまった者としては,耳が痛い話です。免許取得の講習会とか教科書にあるようなネタは,数学のとってつけたような文章題のように全然現実味がなくておもしろくない,だったら何が…というところでいい策が見付かりません。

Posted by: わたやん | March 31, 2007 23:29

いつもありがとうございます。
いえ、パイオニアとして授業実践なさっている先生方をくさすつもりはありません。ただ、私は、自分自身の価値観というか規範というか、そういうものに照らし合わせて納得がいかないと授業に持ち込むことはできない、そういう気持ちなのですよ。
そういえば、小学校のとき。算数で、何か数式があって、この式を使って解くような文章問題をつくりなさい、という課題を与えられたことがありました。私は、何かしら、その式にたどり着くことで視界が開けるような、そういう演習問題を(子どもなりに)作ろうと呻吟したのです。しかし結局そのような良問は思いつかず、ありきたりの、「花子さんはリンゴを○個、みかんを△個持っていました…」のような問題を作り、納得できない気持ちで提出した記憶があります。
三つ子の魂、でしょうかね。

Posted by: aromatic Kam | April 01, 2007 23:18

ココログのメンテがあったのでなかなか返事がかけませんでした。くさしてるとは思ってないです。いい例や課題を作りたい…という悩み,もどかしさは同業者として共通してるんだなあと。
授業は二学期なので,それまでに去年よりは少しでもいいものを見つけたいと考えています。

Posted by: わたやん | April 04, 2007 22:36

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